調剤薬局の事業承継とは?M&Aが必要となる理由

調剤薬局においては、医薬分業が始まり30数年経過し、初期に事業を開始した経営者が世代交代の時期にさしかかっています。

その中で、後継者問題や収益確保の煩雑化などを背景に、調剤薬局の事業承継は今後ますます難しくなると予想されますが、そんな中で事業承継を解決する手法の1つとして、M&A(mergers and acquisitions)の注目度が高まっています。

そこで今回は、調剤薬局の事業承継の現状を詳しくご説明しつつ、M&Aの可能性についてお話します。後継者難をお抱えの方は、ぜひ今回の記事をお役立てください。

1.事業継承とは?

ご自身の事業を次の世代につなげていくことを、事業承継と言います。経営者が高齢となって引退を希望する場合や別の事業に専念したいときなどに、適切な後継者を選んで今後の経営を任せることになります。

事業承継は多くの業界ではもちろん、調剤薬局でも頻繁に行われる動きだと言えます。

事業承継を検討する場合、選択肢は『承継』、『廃業』、『第三者への譲渡』の三つに分類されます。さらに『承継』は親族内承継と親族外承継また、『第三者への譲渡』はIPOとM&Aに細分化することができます。

1.1 家族、親族への承継

実際に事業を引き続くのは、家族・親族や従業員であることが一般的です。特に中規模経営の企業では家族や親族で経営するパターンが多いため、多くのケースで経営者の子供や孫が事業を引き継ぎます。このように家族、親族が事業を引き継ぐ形態を親族内承継と言います。

従来では家族・親族間での事業承継は一般的な流れであったものの、時代が進むごとに減少傾向にあると言われています。親族が事業を継ぎたがらないことも大きなポイントとなります。

事業を運営する経営者としても、「子供には自分の好きな道を進んで欲しい」と希望するケースが増えてきていると考えられています。そのような考え方があることから、親である経営者も子供に引き継ぎを頼まず、結果的に事業の展望が見えなくなることさえあります。

また、親が経営者であるからと言って子供にも経営能力があるとは限らないことも、親族間での事業承継が減少傾向にある原因です。経営者である親が引退時期に差し掛かった時に、子どもの経営者教育が終わっているとは言い切れません。その状態で仮に経営を任せても事業が傾くケースが想定されます。

1.2 家族親族以外への承継

従業員や社長の知人が事業承継を引き継ぐケースです。事業を運営していく中で経営者としての手腕を十分に発揮できるのであれば、家族・親族でなくても適任者を選ぶのが理想だと考える企業は少なくありません。このように家族・親族以外の従業員や知人に事業承継することを、「親族外承継」と言います。

親族外承継の問題として、調剤薬局の多くが中小企業であることを考慮すると、トップの経営者がオーナーを務めているケースがほとんどです。オーナーが株式を自ら保有しているため、事業承継の際には従業員や知人に保有株式を買い取ってもらう必要があります。会社が優良であればあるほど、株式の価値は高くなり、莫大な資金が必要となります。

結果、「いくら優秀な従業員がいても経営は任せられてもコストの面で引き継ぎができず、事業の存続が難しくなっている」という現状があります。

このように、調剤薬局における親族内・親族外の事業承継は減少傾向にあります。

1.3 廃業は最後の選択

先にお話しいたしました、事業承継の選択肢の中から、現在一番多い選択は残念ながら

廃業と言われています。

取引先への影響や、顧客また従業員の雇用を考慮すると、廃業の選択は出来る限り避けたい選択肢となります。特に調剤薬局においては、地域医療や処方元、患者様のこと考えると地域社会における影響も大きいことから避けたい選択ではあります。

1.4 IPOとは

自社の株を証券取引所に新たに売り出すことをIPO(アイピーオー)と呼び、一般に上場することを意味します。新興市場が充実したとはいえ、中堅、小規模が多い調剤薬局においては、まだまだ敷居が高い選択となります。

このように、現実的ではないIPO、避けたい廃業および減少傾向になりつつある親族内・親族外承継の現状において、これらに代わる新たな手段として、M&Aによる承継が注目されています。

2.調剤薬局におけるM&Aのメリットとは?

企業の買収や合併を意味するM&Aは事業譲渡や資本業務提携の意味合いを含む、経営権の移動のことを指します。親族内・親族外での事業承継が厳しくなる中で、現在ではM&Aでの引き継ぎを希望する中小企業が増加しています。

調剤薬局においてもM&Aの動きが多くなっていることから、そのメリットの多さが見てとれます。

2.1 事業承継問題が解決する

事業承継問題のM&Aによるメリットは、後継者難が解決することです。より規模が大きく多くの資本を持つ企業から買収・合併をされることにより、自力で運営するよりはるかに安泰な方法での事業存続が可能になります。

経営者だけでなく、従業員にとってのメリットが大きいことも、M&Aならではの強みです。大企業・一流企業のルールによる経営やマネジメント、福利厚生がなされるため、従業員の仕事へのモチベーションが上がりやすいと報告されています。事業にとってもそこで勤務する従業員にとっても、非常に多いメリットが期待できます。

2.2 創業者利潤を確保できる

それに加えて創業者利潤を得られるケースも多く、M&Aだからこそのメリットだと言えます。

創業者利潤を得るには、株式公開や清算(または廃業)などの手段があります。しかし、株式公開では厳しい審査が必要となり、それほどすぐに受けられるものではありません。清算では資金の多くが税金によって削られてしまうため、非常に有効な方法とは考え難いでしょう。これらの方法に頼ると結果的に資産がマイナスになるケースも少なくないため、十分な検討と予備知識が必要になります。

一方、M&Aでは税率を押さえつつ株式譲渡という形で事業承継を行う為、手元に残る資金は清算よりはるかに多くなります。その資金を元手に新たな事業を始めたり今後の生活資金に充てたりなど、第2の人生を歩む経営者が多いです。

最終的には大手企業に事業を譲る形にはなるものの、ご自身の事業が存続した上で新たなチャレンジや平穏な生活が約束できるのなら、M&Aは非常に有効な事業承継法だと言えます。


 

以上、事業承継の方法や調剤薬局のM&Aの可能性についてお話ししました。医療分業や大手チェーン台頭が著しい状態を考えると、親族内・親族外承継は一層難しくなると見えます。その中で、事業を存続させた上で創業者利潤を確保できるM&Aは、調剤薬局を経営するオーナーの方にとって大きな救いとなることでしょう。

この記事を参考に、ぜひ一度調剤薬局の存続性やM&Aの可能性に注目してみることをおすすめします。